Japanische Klassiker mit Furigana
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こういうきもち
斯ういう気持
宮本 百合子
Lesen Sie 斯ういう気持 (こういうきもち) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.379 Zeichen · 9 Bildschirme
愛は、
「私、一寸出かけて来てよ」
と云った。
「行っといで――さっきの借金忘れないように」
「――だから頂戴」
禎一は訝しそうに、愛の顔を見上げた。
「何を?」
「私の――」
「お前の? 何さ」
「ほんとによ」
愛は、極りのわるそうな顔で囁いた。
「これから放ぽり出してなんか置かないから、ね」
「何さ、わからないよ」
本当に、良人が何を云われて居るのか分らないのを知ると、愛には益々金入れの行方が判らなくなって来た。彼女には、前に一度そういう経験があった。今よりもっと途方に暮れ、さがしあぐねて居ると、禎一が何気なく
「二階見たかい」
と尋ねた。ある筈ないんだけど、と、愛が行って机の引出しをあけて見たら、計らず其がとりあげられて居た。その時を思い出し、彼女は、いきなり良人の仕業と思い込んだのであった。
「どうしたんでしょう、全くないの」
「変じゃあないか」
禎一も立って下に来た。
「ここにあったのよ、確なの其は」
「――台処の木戸あけたかい? 今朝」
「いいえ」
「――昨夜、この部屋に居たのは――小幡とふきだけだね」
「ええ」
何か推考する禎一の瞳と愛の眼がぴったり合った。愛は、ありあり意味を感じ小さい不安そうな声で訊いた。