Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にいづまのしゅき

新妻の手記

豊島 与志雄

Lesen Sie 新妻の手記 (にいづまのしゅき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.807 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

漸く許されて、布団を片付け、ふだんの着物をき、私は母の前に手をついて言った。

「ほんとにお手数をかけました。ありがとうございました。お疲れになりましたでしょう。」

胸が一杯になって、長い言葉は出なかった。

母は何の感慨もなさそうに、けろりとしていた。

「まあ、早くなおってよかったですね。わたしのことなら、疲れもなにもしませんよ。手がかかるといったって、家の中のことですからね、仕事は多いほど張り合いがあっていいんです。なんにも用事がないのがわたしはいちばん嫌ですよ。かりに、あなたが胃をいためて一年寝ようと、胸をいためて二年寝ようと、つきっきりで看病してあげます。まあ縁起でもないことを言って、気をわるくしてはいけませんよ。安心していらっしゃい。わたしはね、動き廻ってるのが、いちばん嬉しいんですよ。」

私に気兼ねさせまいとの心遣いからではなく、ただ、母は卒直に言ってるのだと、私は感じた。働くことの嬉しさを私に教えてるのでもなかった。そして妙なことには、その卒直な言葉が、私の気持ちを却って白々しくさせた。私は母に対して一種の畏怖の念さえ懐いたのである。

思いがけないことが起って、私は、謂わば深淵を覗いた。