Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.757 Zeichen · 375 Bildschirme
と、玄蕃允はそこから駈け足となって降りて行く。
眼下の視野は、つい最前とは、比較にならないほど一変していた。
佐久間勢八千は戦死傷、脱落者をのぞき、三分の一にも足らぬかに見えたが、それは悉く潰乱の兵、逆上の将で、呶号喧騒は、たがいの心理を、実状以上、凄惨なものにし合っている。
それは、玄蕃允の二弟、七右衛門と安政などでは、到底、制しきれぬものだったにちがいない。何せよ、幕将の重なる人々はあらまし斃れ去っているのだ。組に組頭なく、隊は部将のいない兵が、まだ何ら次の指揮に統一されないまに、はや彼方から近づきつつある秀吉軍の急調な進撃を目に見出していたのである。いったんここに潰走を止めても、なお浮き足の熄まないのもむりはなかった。
しかし、前田軍の鉄砲隊が、新手の静粛さをもって、水の如く、この喚きの中を走り、ずっと、陣地の先に離れて、ばたばたと“伏せ”の列を布いたのをながめると。
「二陣につけ」
と、玄蕃允の口から出た命令もよく徹って、ようやく、落着きが見え出した。
前田勢の新手が出た――と知ったことは、一時、生色を失った彼らにとって、非常なる力であった。