Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんちょうき

新潮記

山本 周五郎

Lesen Sie 新潮記 (しんちょうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 155.541 Zeichen · 305 Bildschirme

Aozora Bunko

「ところが御時勢の激しいおかげで、のんきな色恋小説が売れるんだから面白い、なにしろ『艶色恋の手車』がまた重版でげすからね、どっちにしたって面白くなけれあご看客は買わねえ、こないだ脱稿した『歌暦』なんぞは、初版が三千という稀代の部刷りだ」

そのときひょいと庭へ大助が入って来た。他人には眼だたぬうら木戸があってじかに庭と通じている。草履ばきだから誰も気がつかなかった。

「三千の初刷りで眼を廻したか」

「ええびっくりした」寒笑は本当にびっくりしたとみえてとびあがった、「冗談じゃありませんぜ若旦那、あたしあ寝不足で神経が疲れてるんだから、ああびっくりした」

「誰か来なかったか」

大助はあがって来るとにやりともしないで梅八にそう訊いた。寒笑の神経などは興味を唆らなかったとみえる。

「お帰りなさい、え、まだどなたもみえませんでしたが、いらっしゃる筈だったんですか」

「もう来る時分なんだが」

大助は台所の方へいった。梅八があとからついてゆく。すぐに水音がして、どうやら汗でも流すらしい、「寒笑先生、こんどの新作はどうだい、うまくいってるかい」顔を洗いながら大助が叫んだ。

「それがでげす」