Japanische Klassiker mit Furigana
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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
Lesen Sie 新潮記 (しんちょうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 155.541 Zeichen · 305 Bildschirme
三
左近頼該の亀阜荘からは南東にあたる。秀之進は近い裏道をとって、まっすぐに切手御門の前まで来た。そこからはさらに南にある萩の門の出入りも見える。かれは道を隔てた槻の木の林の中へ身をひそめて、じっと二つの門を注視していた。
空には棚雲がかかっていた。月はその雲のかげになっていたが、あたりはかなり明るかった。もう十時に近いであろう、此処は城下町から離れているし人家も稀で、もちろん人の通るけはいもなく、虫の音の高く澄んだ響きが、ずっと更けた夜半であるかのように思わせた。……そう長く待つ間もなく、眼の前にある切手門の中で人の動くさまが聞えてきた。秀之進は北のほうを見やった。「瘤の源十」の知らせでもう水戸の討手の人々が来てもよい頃だと思った。雲にかくれた朧ろの月明りで、築地塀の延びている道はかなり遠くまで見えるが、人の来るようすはなかった。……ぎいと軋る潜り戸の音がした。門内から人が出て来た。二人、三人、ぜんぶで七人出て来た。かれらは二人の男を中に囲うようなかたちで提灯を持たず、そのまま萩の門のほうへと急ぎ足にゆく。
……どうしよう。
秀之進はもういちど振返った。