Japanische Klassiker mit Furigana
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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
Lesen Sie 新潮記 (しんちょうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 155.541 Zeichen · 305 Bildschirme
「されば」寅寿は声を低くした、「これまで常に陰の仕事をさせており、拙者のほかには役目の筋もわからぬようにしてまいったが、じつは砲台築造の件と、仏寺破却の件では重いところを勤めた者でござる、大峰庄蔵、矢田部源七郎、激派(藤田東湖一派)の者どもがこの両名に眼をつけたのはあっぱれでもあり、当方にとってはもっとも痛いところと申されよう、ここでもし両名をかれらの手に取られるとすれば、もはや寅寿の運もそれまでと申すほかはないのだ」
「……して今その両名はいずかたに……?」
「つれて来ておる」えっというように内膳は眼をみはった、寅寿はにこりともせず、「駕かき二名、その者でござる」
善かれ悪しかれ内膳は肚をきめなければならなかった。……かれは秋山平蔵と共に、頼胤側近の二嬖臣といわれている。「君側の奸」という思いきった評判も耳にする。もちろんそういう評判をする者は反対派であった。水戸家の伝統を追う勤王派の者か、でなければ左近頼該を推輓する者たちかのいずれかであった。老臣の多くと、佐幕を本領とする保守派の人々はむしろ悉くかれの頤使に甘んじていた。
かれが「君側の奸」であったかどうかは、しかし公平にみて誰にも断言することはできないであろう。