Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Lesen Sie 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 247.330 Zeichen · 497 Bildschirme
海は気むずかしく荒れていましたが、
空は鏡のように光って
人参燈台の紅色が眼にしみる程あかいのです。
島での悲しみは
すっぱり捨ててしまおうと
私は冷たい汐風をうけて
遠く走る帆船をみました。
一月の白い海と
初なりの蜜柑の匂いは
その日の私を
売られて行く女のようにさぶしくしました。
(一月×日)
暗い雪空だった。朝の膳の上には白い味噌汁に高野豆腐に黒豆がならんでいる。何もかも水っぽい舌ざわりだ。東京は悲しい思い出ばかりなり。いっそ京都か大阪で暮してみようかと思う……。天保山の安宿の二階で、何時までも鳴いている猫の声を寂しく聞きながら、私は呆んやり寝そべっていた。ああこんなにも生きる事はむずかしいものなのか……私は身も心も困憊しきっている。潮臭い蒲団はまるで、魚の腸のようにズルズルに汚れていた。風が海を叩いて、波音が高い。
からっぽの女は私でございます。……生きてゆく才もなければ、生きてゆく富もなければ、生きてゆく美しさもない。さて残ったものは血の気の多い体ばかりだ。私は退屈すると、片方の足を曲げて、鶴のようにキリキリと座敷の中をまわってみる。長い事文字に親しまない目には、御一泊一円よりと壁に張られた文句をひろい読みするばかりだった。