Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Lesen Sie 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 247.330 Zeichen · 497 Bildschirme
門司へ着くまで、その柊の枝はとても生々していました。門司から汽船に乗ると、天井の低い三等船室の暗がりで、父は水の光に透かしては、私の頭の虱を取ってくれた。鹿児島は私には縁遠いところである。母と一緒に歩いていると、時々少女の頃の淋しかった自分の生活を思い出して仕方がない。
「チンチン行きもんそかい。」
「おじゃったもはんか。」
などと云う言葉を、母は国を出て三十年にもなるのに、東京の真中で平気でつかっているのだ。――長い事たよりのなかった私達に、姉が長い手紙をくれて言う事には、「母さん! お元気ですか、いつもお案じ申しています。私はこの春、男の子を産みましたけれど、この五月は初のせっくです、華やかに祝ってやりたくぞんじます。」私はその手紙を見て、どんなにか厭な思いであった。そうして私の心は固く冷たかった。「お母さん! 義理だとか人情だとか、そんな考えだけは捨てて下さい。長い間、私達はどれだけの義理にすがって生きていたのでしょうか、人情にすがっていたのでしょうか、いつも蹴とばされ、はねられどおしで三人はこれまで来たのですよ。私は赤ん坊に祝ってやる事をおしんでいるのではないのですけれども、覚えていますかお母さん!」