Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Lesen Sie 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 247.330 Zeichen · 497 Bildschirme
二階の七番と教えられて扉を叩く。何もないがらんとした部屋なり。
何処かへ出掛けるところとみえてあのひとが帽子をかぶって立っていた。私はやみくもに笑った。あのひともにやにや笑った。とてもいいところへ引越したのねと云うと、詩集を一冊出したので、これからは大変景気がよくなるだろうと云う。それにしても、部屋の中はがらんとしている。野村さんは、これから食堂へ飯を食いに行くのだが、五十銭貸してくれと云う。一緒に戸外へ出る。
泡盛屋の前で、はんてん着のお爺さんが酔ってたおれている。繩のれんの中にはひしめくような人だかり。銭湯のような繁昌ぶりだ。
飯田橋まで歩いて、松竹食堂と云うのにはいる。卓子は砂ぼこり。丼飯にしじみ汁、鯖の煮つけで、また、夫婦のよりが戻ったような気になる。このひとといることは身のつまる事だと思いながら、私はまた陽気な気持ちになり、うんうんといい返事ばかりしてみせる。このひとといて泣く事ばかりだったと云う事はみんな忘れてしまう。
このごろは詩の稿料も幾分かよくなったよと野村さんの話なり。新潮社と云うところは詩一つに就いて六円もくれるのだそうだ。