Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Lesen Sie 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 247.330 Zeichen · 497 Bildschirme
「ああ刻んであげましょう。」沈黙っているにはしのびない悲しさで、障子を開けて、私は松田さんの庖丁を取った。
「昨夜はありがとう、五円を小母さんに払って、五円残ってますから、五円お返ししときますわ。」
松田さんは沈黙って竹の皮から滴るように紅い肉片を取って鍋に入れていた。ふと見上げた歪んだ松田さんの顔に、小さい涙が一滴光っている。奥では弄花が始まったのか、小母さんの、いつものヒステリー声がビンビン天井をつき抜けて行く。松田さんは沈黙ったまま米を磨ぎ出した。
「アラ、御飯はまだ炊かなかったんですか。」
「ええ貴女が御飯を食べていらっしたから、肉を早く上げようと思って。」
洋食皿に分けてもらった肉が、どんな思いで私ののどを通ったか。私は色んな人の姿を思い浮べた。そしてみんなくだらなく思えた。松田さんと結婚をしてもいいと思った。夕食のあと、初めて松田さんの部屋へ遊びに行ってみる。
松田さんは新聞をひろげてゴソゴソさせながら、お正月の餅をそろえて笊へ入れていた。あんなにも、なごやかにくずれていた気持ちが、又前よりもさらに凄くキリリッと弓をはってしまい、私はそのまま部屋へ帰ってきた。