Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Lesen Sie 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 247.330 Zeichen · 497 Bildschirme
人間だけが悩み苦しむと云ういわれを妙な事だと思う。――奥さんは近いうち新潟へ帰郷の由。早くこの家を出なければならぬ。
夕方、八重垣町の縫物屋へ奥さんの夏羽織の仕立物を取りに行く。戸外を歩いていると吻とする。どの往来も打水がしてある。今日は逢初の縁日だと、とある八百屋の店先きで人が話しあっている。バナナがうまそうだし、西瓜も出ている。久しく西瓜も食べた事がない。
ふっと、田舎へ帰りたい気がする。赤い袴をはいた交換手らしい女が三四人で私の前をはしゃぎながら行く。大正琴の音色がしている。季節らしさのこもった夕暮なり。金さえあれば旅行も出来よう、この季節らしさが口惜しくなって来る。いつまでも、仕事探しで、よろよろと、二十歳の私の青春は朽ちてゆくのかもしれない。漂うに任せての生活にも本当に厭になってしまう。自分らしい落ちつき場所と云うものは仲々みつからぬものだ。
人生と云うものはこんなに何かしらごちゃごちゃと寄り添っていながら、わざと濁った方へ、苦しい方へ、退屈な方へ流されて行ってしまっている。そして、人々は不用意に風邪を引く。何処で引いたのかは気がつかない。