Japanische Klassiker mit Furigana
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いちのくらさわなんりょう
新編 風雪のビヴァーク
松濤 明
Lesen Sie 新編 風雪のビヴァーク (いちのくらさわなんりょう) von 松濤 明 (まつなみあきら) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.081 Zeichen · 51 Bildschirme
怖ろしい夜であった。さわとも波打たない四辺の空気に、魂が一滴一滴吸い取られてゆくような気がした。この世のものと思われぬこの闇の中に、自分のツェルトのみがほんのりと浮き出ているのかと思うと、たった一本の蝋燭をともしていることすらが無性に怖ろしかった。
雪を溶かして水を作り、もうぼろぼろになりかけている持参の焼飯を手早く流し込んで、闇との息苦しい神経戦から免れるためにすぐ眠りにかかった。
三月二十六日 曇 風雪
高度は低くとも雪の中はやはり冷える。夜中にいくども目を覚まして、蝋燭で暖をとるうちにいつしか夜も白んでいった。換気孔から覗くと、空はどんより曇って、「いよいよ来るな」と思わせる。降るなら今のうちにありったけ降ってもらいたい。これから国境稜線まではひたすらな登りである。ただ高みへ高みへと登りさえすれば、間違いなく稜線に着くのだから道を失う心配はない。しかし今日の行程は高距が甚しいので、及ぶかぎり支度を早めて五時ツェルトを畳んだ。
こんな重苦しいところでも朝はやはりよい。頭の上にのしかかっていた重いものが取り除かれたような気安さを感じるのだ。これからは、いよいよ本格的な雪の世界に入るので、ウインドヤッケ、ズボン、オーバーシューに身を固め、アイゼンとスノーラケットでいかめしい足ごしらえをして、行動を開始する