Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

いちのくらさわなんりょう

新編 風雪のビヴァーク

松濤 明

Lesen Sie 新編 風雪のビヴァーク (いちのくらさわなんりょう) von 松濤 明 (まつなみあきら) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.081 Zeichen · 51 Bildschirme

Aozora Bunko

ところが――それがたらたらとこぼれた。ハッと思う間もない、私の目の前に真紅な火の海を見た。バーナーの火が移ったのだ。――その後どうしたのかよく覚えていない。ただ手に持っていたベンジンを下に置いて、火の海から体を遠ざけるように、ツェルトごと無我夢中で仰向けざまに雪の中を転がり廻ったのである。火は消えた。ツェルトから這い出して、私はぼんやり雪の中に突立った。真紅な焔の舌がまだ網膜にこびりついて離れない。ふと周囲の明るさに空を仰ぐと、素晴らしい月が今は皓々と冴えている。冷たい月であった。美しい月、夢幻的な月、いろいろ見た月の中にも、かつて私はこんなに物寂しい月は見たことがない。とつぜん激しいノスタルジアが襲ってきた。家、里が恋しい。「引き返そうか」悪魔的な衝動が胸をかすめた。しかしそれは意地でもできない。ただこの上は予定の赤石を越えて一日も早く里へ下りるばかりだ。滅入った気持を強いて引き立たせて、雪中に取り散らかされた品々を整頓にかかった。

被害は思ったほど大きくはなかった。ツェルトに直径三、四寸の穴が二つ三つあいたのと、ウインドヤッケの肩のあたりにやや大きな焼穴ができたのと(これは少々心細い思いを起こさせられたが)、その他肉体的には顔面および頭部に軽い火傷を負ったにすぎなかった。