Japanische Klassiker mit Furigana
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いちのくらさわなんりょう
新編 風雪のビヴァーク
松濤 明
Lesen Sie 新編 風雪のビヴァーク (いちのくらさわなんりょう) von 松濤 明 (まつなみあきら) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.081 Zeichen · 51 Bildschirme
山を去る
これで非常に元気になったが、ここで大切な地図を置き忘れたために、二軒小屋までどのくらいあるのか分らなくなって、ただもう機械的に足を引き摺った。なんと長い道だろう。いつまで経っても同じ道を歩いているような気がした。どのくらい歩いたか、もはや我慢ができなくなった頃、ようやく二軒小屋の集落に着いた。
二軒小屋の発電所の取入口、そこで私はまったく何日ぶりかで生きた人間を見たのである。その夜、ご馳走になった飯の味、蒲団の感触――。眼も棚酸で洗ってもらった。風呂にも入れてもらった。だが、なんにも増して嬉しかったのは、人間の中にいるという意識であったろう。口を開いて人と語り得ることが、なんと幸福なことであろうか。所詮人間は、人間を離れては住み得ないものらしい。
その夜は、温かい蒲団にのびのびと手足を伸ばして、久方ぶりに大快眠をむさぼった。
山を去る
四月一日 晴
今日はもはや転付を越えるばかり。昼食までご馳走になって、一時頃ゆっくり二軒小屋を発った。
峠路はうねうねとジグザグがつづいている。中ほどから雪が現われた。深くはないが腐っているので、よく滑る。喘登がつづいて、一時間余の後峠に着いた。