Japanische Klassiker mit Furigana
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『しんやくげんじものがたり』しょはんのじょ
『新訳源氏物語』初版の序
上田 敏
Lesen Sie 『新訳源氏物語』初版の序 (『しんやくげんじものがたり』しょはんのじょ) von 上田 敏 (うえだびん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.387 Zeichen · 5 Bildschirme
思うその心、今の詩人の好んで歌う「やるせなさ」が、銀の器に吹きかける吐息の、曇ってかつ消えるように掠めて行く。つまりこういう作中の名句には、王朝の世の節奏がおのずから現われていて、殊に作者の心から発しる一種の靭やかな身振が、読者の胸を撫でさするために、名状すべからざる快感が生じるのである。
源氏物語の文章は、当時の宮廷語、殊に貴婦人語にすこぶる近いものだろう。故事出典その他修辞上の装飾には随分、仏書漢籍の影響も見えるが、文脈に至っては、純然たる日本の女言葉である。たとえば冒頭の「いづれの御時にか、女御更衣あまたさぶらひ給ひけるなかに」云々の語法は、今もなお上品な物言の婦人に用いられている。雨夜の品定に現われた女らしい論理が、いかにもそれに相応した言葉で、畦織のように示された所を見れば、これは殆ど言文一致の文章かと察しられる。源氏物語の文体は決して浮華虚飾のものでない。軽率に一見すると、修飾の多過ぎる文章かと誤解するが、それは当時の制度習慣、また宮廷生活の要求する言葉遣のあることを斟酌しないからである。官位に付随する尊敬、煩瑣なる階級の差等、「御」