Japanische Klassiker mit Furigana
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たびやくしゃのつまより
旅役者の妻より
矢田 津世子
Lesen Sie 旅役者の妻より (たびやくしゃのつまより) von 矢田 津世子 (やだつせこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.566 Zeichen · 14 Bildschirme
男妾……しかも奥様の……ああ、何としたことでございましょう。良人に限って、いや、奥様に限ってそんなことがあるものか、奥様の御器量や御身分をねたみ、言葉をかけられる良人の仕合せをやっかんでの下賤もののはしたなさだろう、とは堅く信じてはいるものの、常日頃の、良人にみせる奥様のおやさしさを思うては不安も募り、堅い心も突き崩れるという他愛なさ。
お邸へ出いりするおのぶさんという髪結いの話では、別荘へやって下すったのも奥様の魂胆とやら……美男子の亭主をもっていると気苦労なこった、とあてつけがましいものの言いよう。ええ、言わんでもいいことを、と気もちがたかぶり、つい、むかむかと良人に食ってかかりますと、ただ申訳ない、ゆるしてくれの言いつづけ、仰山な恰好にてその場へ泣き崩れるのを、芝居は家では沢山だ、と思いもよらぬたんかなどきったわれとわが身の浅間しさに良人をかき抱いてすすり上げるという仕末。あね様、この苦しみは何にたとえようもありませぬ。
きけば、おたがいの同情が溶け流れて深間へ落ちこんだとか、良人は生来の正直もの故、あったことのありったけを語りきかせたい素ぶりに、過ぎたことはもうそのままに……と無理にもおし止め、奥様には何事もきかず知らん顔、いつものようにお針でまめに仕えている一方、良人には幕内の気安さを説き、