Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

すると、雲つくばかりのそのミルクの巨塊は静かに潜んだ雷電の巣のように見えて来て、見れば見るほど力が胸から吸いとられていくのだった。

「この山は見ると悪いのだな。」

と矢代は思った。彼は汽車の来るまで山の見えない待合室に隠れ、自分の荷物の傍へよりそっていたが、どうにもその不思議な山が気にかかり、ときどき屋根の下から出てみてこっそり山を仰いだ。すると、その度びに脊骨の中が暗鬱な痛みを覚え、周章ててまた屋根の下へもぐり込んだ。

時間になって軽便のような汽車が著いた。矢代は汽車に乗るとまた幾らか気持ちを取り戻した。窓から石炭の粉がひどく這入って来たが、レールの周囲の高原は眼を奪うばかりの花で満ちて来た。彼は窓から首を出し、花の中を割るようにして曲ってゆく汽車を見ていると、ぼこぼこ煙を吐き出している苦しげな機関車が道化た老人じみて面白かった。牧草の花の向うに氷河を流したスイスの山山が連って現れた。羊の群れが山峡の草の中を地を這う煙のようにぼッと霞んで見えたと思うまに、また花に満ちた高原が両側につづいた。

こんな綺麗なところなら今夜ホテルへ著いてから千鶴子へ約束の電報を打っても良いと矢代は思った。