Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

」

矢代は一瞬菊の香りに似た風が千鶴子の身体から吹き込んで来るように思われた。

「まア、青いお顔よ、お疲れになったの。」

心配そうに云う千鶴子の前に立ったまま、矢代は、

「よく分りましたですね。」

と云ってしっかり握手をした。全く彼は夢想もしなかった喜びに、煌煌と火の這入った満された思いでしばらく茫然として部屋の中を眺めていた。

「日本語を使うのは今日初めてですよ。何んだか変だな。」

「でも、御無事で良かったわ。」

「無事は無事ですが、夢を見てるみたいだ。僕は今来る途中で、とてつもない山を見ましてね、入道雲のような山なんですが、山全体が磁石で出来てるようなもので、そ奴を見ると、疲れてへとへとになるんですよ。」

云うことがどうも頓珍漢になりそうなほど突然の気楽さのためか、事実二人がここにいるということだけで話などはもうどうでも良いのだった。

「まア、どんな山?」

と千鶴子もこう訊き返したものの深く訊きたい様子はさらになかった。矢代は痛んで来た肩を操みつつ、

「さア、絵葉書にはミッテンワルドと書いてあるんだが、口の中で繰り返して云ってると、見ると悪いぞという意味になって来て、驚いて逃げて来たところなんです。