Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
」
と、フランス人は答えた。しばらくして、
「そら、見えたぞ。」
と云うものがあった。矢代は甲板に立つと、お菓子の石のような灰白色の島が波に噛み砕かれているのが眼についた。
甲板に立つ船客たちはだんだん多くなって来た。誰も笑うものはない。海上に連った銀鼠色の低い岩が後へ後へと過ぎてゆく。瑠璃色の鋭い波の上には風が強い。
久慈と矢代はまだ見ぬヨーロッパの土の匂いを嗅ぐように、サロンデッキの欄干に身をよせかけ黙ってさっきから眺めていたが、突然、久慈は、
「何んだ、これや、クリスマス・ケーキみたいな所だな。」
と呟いた。一同どっと笑い出して、
「そうだそうだ。」
と云う。しかし、すぐまた黙ると、これは日本で習った礼儀作法や習慣は、何一つ通用しそうもないと、そろそろ身の処置にまごまごする不安が一同の顔に現れた。息の仕方もここでは頭でしなければならぬ。群れよる鮪の大群の中へ僅かな鮒がひらひらさ迷い出るように、押し潰されそうな幻覚を感じ、岩を噛む波の色までお伽噺の中の人魚を洗う波かと見える。
「向うに見えます島は、デュウマの小説に出て来る巌窟王の幽閉された岩屋です。」