Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

こんな素朴な美しさというか、和かさというか、とにかく平和な愛情が何の不平もなく民衆の中にひそまって黙っているよ。桃の花さえ笑ってくれてれば良いというのと、牛の飼麦の煮えるのまで喜んでいる心というのとは、だいぶこれで違いがあるよ。ところが、日本と中国の知識階級は、こういう両国の底の心というものをみな知らなくなってしまってる。僕だって君だってだ。殊に君なんかひどすぎるぞ。このまま行けば、僕らは東洋乞食というか、西洋乞食というか、まア君なんか西洋の方だなア。」

「今さらお前は乞食だと云ったって、三日すれや熄められるか。」

どちらか皮肉を云い出せば、髄まで刺し通して共倒れになるまでやり合う習慣がまたしても出かかったが、もう久慈には刺される痛さも感じない、午後の気重い退屈さがのしかかっていた。それは街の石の重さのようにどっしりと胸の底に坐り込み、突いても吹いても動き出す気配のない重さだった。貸家になっている前の家の石壁に打ち込まれた鉄鋲から垂れ流れている錆あとが、血のように眼に滲みつく。それが顔を上げる度びうるさく前に立ちはだかって来て放れなくなると、久慈は椅子ごと真紀子の方へ向き変った。