Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
どこへ行くにも番人みたいに後の汽車か先の汽車で来てるんですもの。あたしだって腹が立つでしょうね。」
人の流れがそれぞれの桟敷へと動き出した。二人はまた階段を登っていった。矢代は吊り上げるように真紀子を支えねばならぬので、ふと擦れ合う胴の触感から醒める暗黙の危機を感じた。実際こんなに千鶴子にも同様この危機が刻刻襲っているものなら、必ずピエールの鋭い眼が生ま生ましい慾情に変っていることなど自然なことだと、うるさくまた悩みが追って来るのだった。しかも、発火点が擦れ合いつつ再び密房のような桟敷へ這入っていくのである。桟敷には頼めば係りの老婆が鍵までかけてくれるばかりではない。窓には重いカーテンの用意まで出来ていた。
桟敷へ這入ると室内の真紅の色や鏡が暗怪な色調のまま矢代の皮膚を撫でて来た。彼は真紀子から視線をそらせているものの、ただ二人きりの密房の中の沈黙は重苦しい刺戟を増すばかりだった。これで何事か起らぬ方が不自然だと云いたげな部屋の長いソファも同色の紅いである。真紀子は黙りつづけて窓から舞台の幕を見ていたが、一刻の魔の通過を感じ合う呼吸は、触れば今すぐにも首を落す危い植物のような刹那を二人で持ち合いますます重さを加えていくのだった。