Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

矢代はフリーゼをかけた千鶴子の髪を首筋で受けとめながら、自分にも分らぬ深部から鳴り揺れて来る楽しさを感じた。舞台の進行は分っているが、自分らの進行だけは全く未だ分らぬこれからの楽しさばかりだと矢代は思い、ますます後へは退けない責任を感じて千鶴子の重みを支えつづけているのだった。音楽がまたしきりに『貴重な愛』を失ったアルマンの歎きをつづけていった。

「あら、汚れたわ。」

千鶴子は急に首を上げて矢代の肩に附いた粉白粉を払った。そして、笑いながら、

「御免なさいね。」

と云うと矢代の手を自分の膝の上に置き両手で揉むように撫でた。矢代は千鶴子が身動きすると一層高まる酔いに似たものを感じた。一つは悲劇に落ちていく切切たる歎きの情緒を湛えた音楽が、二人の中へ嫉妬のように割り込んで来るためもあったが、それにしても今のこの愛情をもし誰かがひき裂いてゆくとしたら、自分もあのアルマンのように乱れ悲しむにちがいないと思い、矢代は支えている千鶴子の耳飾の冷たく首に触れるのもひやりとする切なさだった。

「もういかなくちゃいけないわ。幕よもう。」

千鶴子は立って鏡の傍へより顔を直しながら矢代に、