Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
真紀子は受話器を置くと、
「いらっしゃるのよ。ここへ。」
と云ってさも何事もなかったように自分の椅子へ戻った。久慈も椅子へ腰を降ろした。真紀子は眼を細め下から覗くように首を傾けて、
「セヴィラへ行きましようね。ほんとうよ。」
「どうも、しかし、けしからんね。矢代の奴。」
と久慈は笑いながら煙草を取り出して云った。
「あ、そう、あなただけお花とってらっしゃる方がいいわ。」
真紀子が腕を伸ばそうとするのを、久慈は肩を後へ引きとめた。
「いいよ。僕だってお花ぐらい貰わなくちゃ、パリへ何しに来たんか分らない。」
「でも、何んだかおかしいわ。また上げますからとっといて下さいよ。」
真紀子は無理に久慈の襟から薔薇をむしりとると、捨て所を索すようにあたりを見廻していてから寝台の枕の傍へぽいと投げた。久慈は白い枕とシーツの間へとまった真紅の薔薇の一点を見ているうちに、何かある清らかな聖鳥を見るような思いに胸がつまって来るのだった。
「よし、分った。」
久慈は思わず膝を打って嬉しそうに天井を仰いだ。
「何に?」
不思議そうに見ている真紀子に久慈は介意わず、
「得度したぞ。ノートル・ダムのお蔭だ。