Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
」
と云ってまた薔薇の方を眺め返した。そのとき、ノックの音がしたが久慈はもうドアの方を向こうともしなかった。心はしきりに弾み上って来るのに爽やかな流れが抵抗もなく胸の底を流れつづけた。
真紀子が立っていってドアを開けたとき思いがけなく外に高が立っていた。
「あら、高さんですわ。あなた。」
と真紀子は久慈の方を振り返ってからまた高に、
「いま矢代さんがいらっしゃるっていうもんですから、矢代さんだとばかり思って――さア、どうぞ。」
久慈は高だと教えられても別に驚きもしなかった。這入って来るものがどこの国のものだって今はもう良いと思うと、淀みのない快活な心が波うって来るのを覚え、握手しながら船中以来の挨拶を高にした。長身に縞のダブルの服を着た高は、幾らか胃の窪んだような姿勢のまま眼鏡の奥で柔かに笑っていた。
「今日はノートル・ダムへ行きましてね。中へ這入ったものだから埃りだらけになりましたよ。えらい埃りだ。」
久慈は高とさし向いに坐り理由もなくいきなりからからと笑ってから、
「どうです、その後御無事ですか。」
と妙に大きな声で訊ねた。
「ええ、丈夫です。」
高は東京にいたときの日本の挨拶を思い出したと見え少し遅れてこう云ったが、どこかにまだあたりを警戒している物腰が笑顔の中に漂った。