Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
」
「あたしもそうなの。」
千鶴子は矢代の顔を見ながら、片頬の靨に快心の微笑を泛べて頷いた。
「これじゃ僕は外国の生活や景色を見に来たのじゃなくって、結局のところ、自分を見に来たのと同じだと思いましたよ。それや、景色も見ようし、博物館も見るでしょうが、何より変っていく自分を見るのが面白くて来たようなものですよ。今日一日で僕はずいぶん変ってしまいましたね。皆今夜帰って来て、どんな顔をして来るか、これや、見ものですよ。元気のいいのはあの老人の沖さんだけだ。僕は足まで動かなくなってしまったし。ははははは。」
と矢代は笑うと千鶴子から遠ざかって甲板の上を歩いた。
いや、良かった。危いところを擦り抜けた。もしあのとき、うっかり口を辷らせてでもいたら――とそう思うと軽い戦慄を感じて来るのだった。
朝靄のかかった埠頭ではやがて船の荷積も終ろうとしていた。パリへ出発する一団のものは、眠そうな顔でそれぞれ船室からサロンへ集って来た。
「さア揃いましたか、それじゃ、行きましょう。」
と案内人が簡単に云った。
船客と友人になってしまった船員たちは、甲板や梯子の中段に鳥のように集りたかって別れの言葉を云ったが、どの人人も真心のこもった表情で欄干の傍からいつまでも姿を消そうとしなかった。