Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「あら、あんな所で踊っているわ。今日は踊りを初めて見てよ。淋しそうな踊りだこと。」
と云って皆の視線をある街角の鋪道に向けた。そのあたりはもう人気のない空虚の街だった。通る人もなければ振り向く者もない一角に、数組の男女が慎重にステップに気をつけた態度で踊っていた。山中の踊りかと見えるその男女の舞いの上に、雨も降りかかっているらしく石の上には斑点が浮んでいた。
ドームの前まで来かかったとき、たった一人のお客がテラスに腰かけたままぼんやりと空模様を眺めていた。それが東野だった。
「あッ、おやじ一人いるわい。」
と久慈は懐しそうに云って窓ガラスを叩いたが、その前を通りすぎた一行の自動車は、凄い速力で早やテラスから遠ざかってしまっていた。ここは雨が降ったと見え鋪道は濡れていて、急に冷えた空気が千鶴子たちの香水の匂いをあおり返して来た。
「東野さん、人民戦線なんか御覧になりたくないのね。」
と真紀子は後ろの方を振り返ってみて云った。
「そうじゃない。きっともう見ているよ。」
こう云う久慈に矢代は、
「それや見てる。ただあの人は心の騒ぐのがうるさいんだよ。今日のような日は、一番難しいのは塩野君かもしれないね。