Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「ロンドンに暫くまたいらっしゃるようだったら、ときどき手紙を下さい、もっとも僕もすぐここを立つだろうと思いますがね。」
「ええ、でもすぐ船に乗らなくちゃならないと思うの。ですからあたし船の中からお出しするわ。あなたのホテル、手紙きっと廻してくれるのかしら、そんな妙なことだけがこの間からの心配ですのよ。」
見上げて笑うらしい千鶴子の声に矢代もつい笑い出した。
「大丈夫ですよ。あなたがニューヨークへ着いたころは、僕はベルリンあたりにいると思うな。」
「あたしたち横浜へ着くの三十日ほどかかるんですから、もしあなたがシベリヤ廻りでお帰りになるんだったら、十日ばかりあなたの方が早いわけよ。面白いわそしたら。」
千鶴子はこう云いながら明日の別れを少しも惜しむ様子ではなく、むしろ矢代のこの度びの黙っている別れの気持ちを万事のみ込んでいる風がありありとした。こんなときでも東西に別れて二人が帰らねばならぬ事情というものは、やはりそれぞれにこれで胸中にあるのだなと矢代は思い、またそれが日本の風習である限り是非それだけは守らねば、どっちの父母からも許されぬもののあるのが、厳格極まりない日本だと思った。