Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

「じゃ、あなたは前にいっぺんここを通ったのに、それでもまだここにびっくりされるんですか。」

「そのときのことは、もう忘れてますね。何んでも雪ばかしだったから、あのときは外なんか見なかった。いや、しかし、今度はたしかにびっくりしましたよ。」

一度ここを通ったものは、生涯この大きな景色を忘れることなど不可能だと思っていたときだったから、南のそう云う頭の中が、もう矢代には想像出来なかった。十年の外国生活の間に、無茶苦茶に何かが詰ってシベリヤなど追い出してしまっているものが、これで南の頭の中に犇めいているに相違ない、と矢代は思った。

しかし、そういえば、これで矢代も今はしどろもどろの態だった。もう今は考える余力などなくなり、見て来たものだけの重さを持ち応えているだけがやっとのことだった。パリを発ったのが七月の終りで、それからベルリンへ行った一ヵ月の間に、またいろいろの事情でイタリアまで飛行機で飛んだりした。その間、アメリカを廻っている千鶴子から手紙が三度ばかり来たが、矢代の方からは宿の定まらぬ千鶴子に手紙の出しようがなかった。ベルリンでは沢山な日本人と彼は新しく知り合になった。