Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

矢代はこれでもし自分が思想的にソビエットと何かの交渉を持つものだったら、あるいはこの反対の感じを受けるのかもしれないと思った。矢代は霊柩車に横わっているような思いで身体を車に任せていたが、いやが応でも迫って来る自分の国と接した国境ほど、自分を偽れぬものはないと思った。それはちょうどプリズムの面に射した光線が屈折して通らねばならぬように、人の心も自分の光の光源がどこにあるのかここで初めてよく分るのだった。矢代は自分も幾度も折れてみて来た光線に似ているなと、寝ながらも思った。そして、その光源の方へ今や戻って行こうとしている自分だと強く感じた。

こんな感じが強かったためか、また彼は自然に、別れるときに祈りを上げたカソリックの千鶴子の姿も思い出した。この千鶴子の姿は、今までに幾度となく彼の思いの中に泛んで来た姿だったが、今の千鶴子の祈る姿は、不思議と喰い違う歯車のきしみを感じて矢代は困るのだった。

「ここで思ったり為たりしたことは、あたし一番変らないと思うの。本当にそう思うわ。」

ふと何気なくそのとき云った千鶴子の言葉だったが、どこかに矢代の希う光源とは異う光りに満たされたその声が気になった。