Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「とにかく分ったぞ。何んだかしら分った。」
と彼はひとり呟いた。そのくせ何が分ったのか考えもしなかったが、もう考えずとも、証明を終えた答案から離れたような身軽さで、後を振り返る気持ちはさらになかった。
「何んか僕食べたいのですよ。お寿司がどうも食べたいなア。一寸お母さんさきに帰ってくれませんか。」
矢代は母にそう云ってタクシに乗り込み途中で自分一人だけ銀座で降りるつもりだった。銀座の方へ動き出した車の中で、彼は、今は勝手気ままの云える子供の自分を、仕合せこの上もないことだと思った。母の縮みの襟もとが清潔な厳しさで身を包んでいる夏姿へ、彼は凭りかかるように反り、自分の永らく忘れていたのは、この母と父との労苦だったとふと思ったが、それも今は自分の身の疲れと同じように感じられた。
「もうじき涼しくなるが、まだ暑さは相当つづくね。」始終黙っていた父は誰にともなく一言云った。
「そうだ。まだ夏なんだな。」と矢代は呟くように云った。そして、季節のことなどすっかり忘れていた自分に気がついて初めて笑った。
「あなた、暑くないの。合服なんか着て。」
矢代を見てそう云う母に、「何んだかもう分らないですよ。