Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
運転手にそこで千鶴子の家の「宇佐見」の名を訊かせてみると、尋ねる家はもうよほど近づいていた。彼は曲り角で車を待たせて歩いた。幹の中ほどから二つに分れた椎の大木が、道路の中央にただ一本立ちはだかっていて、そこを折れると、両側に長くつづいた練塀に狭められ、あたりは一層暗くなった。どの家の塀の中からも大樹が覗いていて、樹の香が鼻を透して来た。矢代は闇の中を歩いているうちに、車を降りたときの胸騒ぎがしだいに無くなるのを感じた。千鶴子の家を見つけても今ごろから中へは入れぬ事情だったが、今はただ見て置けばそれで良いと思った。彼は云われたまま眼で追って行く左側の所に、趣味の良い太めの建仁寺垣を連ねた門が見えた。そこの門標にはまぎれもなく宇佐見の名がはっきり眼についた。彼は人通りの誰もない道路の中央の所に立って、光りを除け、暫く欅の一枚板の閉った門を見つめていた。葉の細かい椎と椿の大木が門の裏側に茂っていて、そこから玄関までよほどの距離の庭があるらしかった。潜戸の隙から中を覗くと、庭いちめんの白い砂が夜気を吸いあつめ、寝静った玄関をがっしりと守っていた。矢代は一見して、その単調な厳しさからカソリックの千鶴子のしつけが頷かれた。