Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
漂う和らぎは厳しさの結果から来ているらしい。整然とした規矩もあった。矢代はこれがあの自分の夢の生い育った家だったのかと思うと、まだ旅のうつろいやまぬ夢心地も、急に醒め冷えて来るのを覚えた。もし今ここへ千鶴子が顕われて来たなら、ともに異国に遊んだその姿も別人のように見えるにちがいないと思った。彼は夢の脱落してゆく下から顕われた正体に面と対った感じで、暫くはそこから動かず立っていたが、自分と千鶴子との間に立ちはだかりて二人を会わさぬものは、争われず、この欅の門扉に厳しく顕われ出ている家風だと思った。彼は待たせてあった車の方へ戻っていった。車の中でも彼は、マルセーユへ上陸した途端に、同船の男たちがいままでの千鶴子を眼中から振り落してしまったときの、一日の恐るべき変化を思い出した。あのヨーロッパへ上陸した途端に、まったく千鶴子の魅力の消え失せた日とは逆に、今は彼女に面会することさえ出来ぬこの変化は、これはいったい何んだろう。
矢代は車のライトに照し出されては消えてゆく家家を見ながら、その一つ一つに具った家風の違いを思うと、千鶴子と結婚する無理から起って来る自分の方の両親の困難が想像された。