Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

海に面した丘の上の病棟で矢代は初めて幸子と会った。見たところ妹は病人らしい様子が少しもなかった。円顔で頭の廻りの早そうなくるくるした眼は、いつも兄の考えを通り脱け、勝手なところへ出てまた廻る癖があるので、自然矢代も妹にだけは言葉を濁す癖があった。

「帰りたいと思ってるんだけど、急いでまた悪くなるの恐いから、当分は動かないつもりなの。」

幸子はそう云ってから、毎日ここから海を見ては矢代のことを想像して愉しんだと話した。ミラノで買った革製のハンドバッグや、パリの財布、ベニスのショールなど、矢代の出した土産物を手にとって妹は面にも嬉しさを顕した。矢代は東北の湯治場のことや滝川家のことなどをあれこれと話したが、外国のことについてはあまり云い出そうとしなかった。

「日本海を見てここへ来ると、太平洋の明るさは特によく分るものだね。北の方はもう秋雨がひどいよ。」

「どこが一番良かった?」

知りきった東北のことより外国のことを何より訊きたいらしい。幸子の眼つきは、何かに飛びつきそうな光りだった。矢代はそれが不愉快で幾らかいやらしく感じたが、それもやむを得ない病人の歓びかもしれぬと思い、