Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
」
千鶴子が眉を少し開いて云いかけようとしたとき、塩野はすぐ横から「いいなア、行こう行こう。」と勢い込んで千鶴子に云った。
「そのうちみんな、どっと帰って来るから、そしたら皆で一緒に行こうや。僕は自分のこれからの仕事としても、日本の良い所を写真にとって、どしどし外国へ向けてやらなくちゃならんのだから、何よりだ。もうそろそろ明日からでもかからなくちゃ。」
塩野のそう云うのに由吉だけは一寸頭を撫で、つまらなそうに声を落して云った。
「君らはいいね。僕はそのころは、またヨーロッパだ。僕のは命ぜられるんだから仕様がない。」
なるほどまだこれから行く人もあるのかと矢代は思うと、由吉の落した声を気の毒に聞くのだった。
「帰って来たばかりだのに、行く奴の話を聞くのは面白くないなア。」
と塩野は急にがっかりしたように笑った。
「しかし、僕はさっきの矢代氏の、あのお話は面白いと思ったね。僕らは人間の幻影を拭き落してゆくのが運命だというね、僕もどうも、そんな気がするんだが。」
パイプを啣えた大きな顔を天井に向け、眼だけで塩野を見降すようにして云う由吉の様子を見て、矢代は、突然話を切り換えたその由吉の頭の鋭さを、風貌とは似合わぬ繊細な能力をひそめた商務員だと思った。