Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
矢代は侯爵にはいままで一度も会ったことがなかった。しかし、その人の先祖の城は日本で一種特別な城として有名で彼も二度ばかり見た記憶があった。雨中に眺めたときの姿は、矢羽根を連ねたような黒褐色の壮大さで、自分の国の崩れた城跡とは凡そ反対な、一見翼を拡げた見事な鳶を聯想させた。その姿の下に、雨水を集めた大河が泡立ち流れとぐろを巻いていたさまは、栄え極めた鮮明な美しさの城だった。
「一度、僕にその侯爵を見せていただけませんかね、何んだか、僕はその方から鳶を感じるんだが、そういう方でもないんですか。」
「鳶?」
「そう、どういうものだか鳶に似てるね。」
千鶴子は高い崖から飛び降りたときのようにまだ呼吸を弾ませ、暫くは笑顔もなく怨めしそうに黙っていたが、ふうっと太い吐息をついて空を見上げた。
「あたし何んだか眼暈いがするの。すみませんが、自動車探していただけませんかしら。」
静脈の浮き出た千鶴子の額の汗ばんでいるのを見て、矢代はすぐ外に出た。彼はタクシを探しながらも、予想以上に衝撃を受けたらしい千鶴子に同情するのだった。たしかにカソリックを誇りとしていることに間違いのない千鶴子だと分っていながら、つい話の調子が意地悪くあんなに辷っていったということは、もうあの場合は、音波の拡がりのような運命だったのだと矢代は思った。