Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
矢代はふとショパンのプレリュウドはここそのままの光景だと思った。しかも、その中を、腕を組まれて歩いている自分であった。
「日本にこれだけ美しい通りの出来るまでには、まだ二百年はかかるよ。僕らはここを見て日本の二百年を生きたんだよ。たしかにそうだよ。今さら何も、云うことないじゃないか。」
涙を浮べて云うような久慈の切なげな言葉を聞いては矢代もも早や意見は出なかった。アンリエットの薔薇の匂いが夜の匂いのようにゆらめくのを感じながら、これが二百年後の日本にも匂う匂いであろうかと、心は黄泉に漂うごとくうつらとするのだった。
矢代と久慈がブールジエ飛行場まで来たときは、ロンドンから千鶴子の来る時間に間もなかった。晴れ渡った芝生の広場に建っているホールの待合室で、パリを中心に光線のように放射している無数の航空路の地図を眺め二人は立っていた。ときどき夕暮から夜へかけて、突然、日本へ帰りたい郷愁に襲われるこのごろの矢代は、一途にここからシンガポールまで飛びたいと思った。
「ロンドンへもそのうち、一度行こうじゃないか。ね、君。」
と久慈は久慈で何かの夢想にかられているらしい。