Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

「千鶴子さん、まアここへおかけなさい。御馳走は下のお婆さんに頼んだのが来れば、さしあげられますから。」

千鶴子は外套の袖から腕を抜いてストーブの傍へ来た。まだ部屋に籠っているバタ焼の鶏の臭いが千鶴子の動く身につれ掠め立った。

「由吉兄さん、そろそろまた外国行きの準備なんですけれど先日あなたに云われたの利いたものか、今度は奈良や京都をよく一度見直して行くんだと云ってますのよ。そのときあたしも一緒に行きたいと思うの。あなたもいかが?」

「それならいつでもお供します。」と矢代は云った。「しかし、由吉さん、疲れの休まる暇もありませんね。僕なんか、まだ疲れが癒ったとは思えないんだが、馴れてる人はそうでもないものかな。」

「何んですか、このごろは早く外国へ行きたいような素振りもあるんですのよ。あたしにも、一緒にまた行かないかなんて、云うんですの。」

由吉の冗談だとばかり、気軽く千鶴子も思って云ったつもりらしかったが、矢代にはそれがかなり強く響いて応えた。たとい由吉の冗談とはいえ、そんな空気も宇佐美一家の中に漂っていることは見逃しがたいことだった。それも他の男と結婚を迫られている現在の千鶴子の唯一の逃げ場も、再度の外国行き以外にないことを見抜いている、由吉の同情した誘いかとも、矢代には考えられた。