Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「異端者か。なるほど――」と矢代はまた呟いた。
実際、この一ことの言葉を云われたために、どれだけ多くの人人がこれと闘い、自分の生命を奪われていったことだろうと矢代は思った。しかも、今やそれが矢代の意識にも迫って来たのである。たとい千鶴子が直接彼に云わなくとも、何ものかが千鶴子を通し、指で彼をさし示して云ったのと同じだった。
しかし、矢代はそういう場合に、その異端者である自分がいよいよ千鶴子と結婚するのだと思うと、差し向けられた刃より、むしろ、それに滅ぼされた自分の先祖たちが、自分の背後から立ち襲って来る呻きの方を強く感じた。腹背から受けたその差迫った険しいものの間で、矢代は、辛うじて呼吸をしている白白しい時間をつづけるばかりだった。
丁度そうしている胸苦しい時だった。谷を下って行く貨物列車の音がして、それが消え去った夜空の静けさの中を、宿の方から鈍く重い鼓の音が弾んで来た。鼓は暫くは何気なくただ、「ぽん、ぽん、――ぽぽぽんぽん」とつづいていただけだったが、そのうちに腹に溜った悪液を押し出す作用をして、一音ごとに首が延び上り、軽くなる腹部とともに鼓の音も冴えて来た。