Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
矢代は、槙三に山の湯の中で話したようなことを友人たちに云った結果は、丁度パリでの久慈とのようにいつの場合も悪かった。それを承知で槙三にも話したのは、一つはその避けられる悪結果を延ばすより、一時も早く通り過ごさせてしまいたかったからだったが、友人たちでさえ顔を顰めて攻撃する事柄を、撰りに撰って結婚の相手の兄に話さねばいられぬ苦痛も、しかし、まだまだこれで鎮まってはいないのだと思った。もしこの自分という日本人の本心をのべる心をさらけ出し、熄むに熄まれずうち明けて言葉を云えば、そして、もしそれを貫き通してゆきたい思いをこれ以上続けてゆけば、どの友人たちからも見捨てられるだけではなかった。千鶴子との結婚も砕いてしまう作用を強くして行くばかりの不幸の来ることも分っていた。何か自分の行く所すべて人人は飛び散っていなくなる火を、もう自分は抱き擁えてしまったのだろうか。――
矢代は壁面のノートル・ダムの写真をまた眺めた。このカソリックの本山の写真の前では、これで千鶴子も、今の彼の姿を眺める気持ちも、常とは違うであろうと矢代は思った。しかし、それも秘かにそっと隠し、彼の苦しみを分け持とうと努めていてくれる千鶴子の優しさが、さきから矢代には分っていた。