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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

それを思うと、矢代は自分の黙りつづけているのが苦痛だった。しかし、この夜は彼も、男爵とのそんな些細なことで心を痛めていられるときではなかった。さきからも暗黙のうちに由吉と侯爵とから間断なくうけている査問の視線も、また軽からず身に感じた。それもこれも、すべてはただほんの暫く、自分が外国へ行っていたためばかりに起ったことだった。

彼はそのようなことも知らずにいる千鶴子が、今は何より気の毒に思った。それも、自分がどんなに振り払おうと努めても、いつか身近によって来て去りそうにもない人だった。いったい、何ぜこの人は自分の傍へなど来るのだろう。

「あたしは日本へ帰っても変らないわ。変るのは、きっとあなたの方だわ。」

こういうことをパリで別れる際、ただ一言云った千鶴子の勝ち気のためかあるいはカソリックの仕業であろうか、とにかく今の矢代にはこれだけが分らぬことの一つだった。

庭の薄明りがまったく消えたころ、侯爵夫人が薄藤色の洋装でピアノの羽根の前を横切って顕れると、皆のものに会釈をして食堂の用意の出来たことを報らせた。一同は椅子から立って隣室を通りその向うの食堂へ這入っていった。