Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
それや僕だって、少しはいい気持ちになりますよ。」
「そんなことはあたしに云わずに、お父さんに云ってごらんなさいよ。」母は子の方へ一寸無意識に菓子を手でよせ、嬉しそうだった。
「おやじには駄目だ。僕が男爵と物を云ったことが、すでにもう無礼なことをしたと、思う人ですからね。僕がお礼を云い忘れたことなど話しちゃいけませんよ。ひどいお目玉だ。」
「それやいけませんね。そんなことなどしれちゃお父さん――」母は湯呑を上げ暫く子の顔を見守ったまま、どうしたことかふと黙った。
「この次お礼を云ったんじゃ、手遅れだし。どうしたのか昨夕は――まア、云わない方が、その場の礼儀にかなっているような気がしたものだから。」
後悔というのでもなく、自分の失礼と感じたのでもない、しかし、黙っていたことが、今となっては気辛い味となって尾を曳いていることは確かだった。それも一つは、男爵が自分の気に入った人だからだと矢代の思ったのはまだしも良いとして、いつの間にか彼は、もし千鶴子との結婚の場合に、父や母が不承知のときを想像し、そのときには久木男爵に頼み両親を説き伏せて貰う虫の好い考えさえ、幽かに頭に忍び入って来るのだった。