Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
夕食前風呂に這入ったときも、体を洗うのも大儀に感じたほどだったが、気持ちは常になく晴やかだった。
「今日みたいな気持ちの良い日は、僕は初めてだなア。」
と風呂から出たとき、身体を拭き拭き矢代は母に云った。
「たまに働くとそういうものですよ。」食事の用意をしている母は笑った。
「土の匂いがいいんですね。」
そう云いつつも、やはりそれは近ごろ初めてしてみた正直な働きのためだと矢代は思った。自然に対い恥じざる行いに少しばかり接近したのだと思ってそっと黙り、彼は新しい襯衣に着替えて帯を強く締めてみた。夜になってから気温が急に下り雪模様の冷えた空気が室内にも襲って来た。食事のときは、この夜は珍しく父の部屋で揃いの高膳だった。父は晩酌を矢代に奨め、
「どうだい、いっぱい。」
と酌をしてくれた。父と一緒のときは矢代は自分の年も忘れ、十歳ほどの少年のような気持ちになり、いまだに成長した覚えのないのが不思議だったが、それが父から酌を享けると、突然に身丈の伸びた感じで気羞しく盃を出すのだった。いつもは父とあまり話さぬ癖の彼も、そうして三四杯父から続けられるにつれ、疲れに酒が加わって、何かと饒舌り出しそうな気色も動いて来たりした。