Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「そうそう、久木さんにさきからお訊きしたいと思っていたのですが、矢代君の説によると、御幣と数学の集合論の中心部分が等しいというのですがね、久木さんは数学の御専門だから、その集合論の概念を一つと思っていたのですよ。」
と、また矢代の名前を皆の面前へ引き摺り出した。
「はて、何んですかね、それは――」
久木男爵は小首をかしげ、「矢代さん、矢代さん何んですそのあなたのお説というのは。」と今まで人の背後に隠れるように苦心していた彼の方を覗いて訊ねた。
「いや、僕もよく知らないんですよ。」と矢代は咄嵯に答えて笑った。一同のものの笑声に混り千鶴子も笑顔をちらりと彼の方に向けたが、急に千鶴子だけひとり愁いを顔に表わして矢代をじっと見詰めていた。
「あなたは今夜はまた馬鹿にお静かですね。さてはそこから船の灯を見て、思い出したのですか。」と久木男爵は云ったので笑いは一層高くなった。
矢代は熱くほてって来る顔を皆から転じて船の灯火を見た。碇泊している東野らの船の、まだ灯を点けたまま埠頭に長く連っている明るさが、またも千鶴子と一緒に航海した港港の夜景を思い出させて来るのだった。