Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

高さは夜分で分らぬながら、見上げる枝は道いっぱいに拡っていて、四人づれの矢代らは両側に裂かれてそれぞれ通っていった。練塀を連ねた静かな小路に瓦がしっとり重く湿って見えるころだった。

「君来たことあるの、ここへ。」と塩野は不思議そうに訊ねた。

「一度通ったことがあるんだ。秋だったかね。」

外国から帰った当夜、自宅へ戻るより先に、ここまで飛ぶように来たときの、あの思い上ったような寂しさや身の軽さを彼は思いあわせ、今夜の夜道はそのときとは違い、よほど踏み応えのあるたしかなものに見え、これからも幾度ここをこうして通ることだろうと考えたりした。しかし、そういえば、千鶴子と初めて船で会ったとき以来月日はまだ一年よりたたないのだと思った。ただの一年で見切れぬものを見、聞きなれぬものを聞き、行いきれぬものを行った結果が、この夜道を選んだのだとすると、間もなくこれから見える千鶴子の家の門口は、自分にとって地獄か天国か、どちらかの道の入口にちがいはないとも思った。

「今日は僕らは一日海を見て暮したが、何んでもない日じゃなかったね。僕は東野さんらの船の入港して来るのを見ているとき、旅立ってから一年もたったのだなアと思ったが、しかし、君、あの夢みたいな僕らの一年は、あれは非常な生活の実践だったどいうことが分ったね。