Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
」と佐佐は云って生菓子を一つ摘まんだ。
「しかし、あの久木男爵も面白かったよ。御幣の形と射影幾何との説明を、港港を船で行くといったところなんて、ただの鼠の爺さんじゃ、ちょっと出来ない芸当だよ。僕はあのとき、つい悪いことを思い出してね、よっぽど云おうかなと思ったんだが、それも悪くてやめちゃった。あの爺さんには、パリで千鶴子さんと僕と大石とは困らせられたんだからなア。」と塩野は今ごろ急に意外なことを云い出して苦笑した。
「どうして。」千鶴子も矢代同様急には解せぬ面持ちで訊ねた。
「ほら、あのパリの大蔵大臣邸で夜会があったでしょうが。あのときには、僕ら、久木男爵とこの鮭の缶詰を輸出させるのに骨折った夜会だったのさ。フランスの法律を動かそうってんだから、何しろ相手は鉄壁の陣営だよ。それを二三日前から徹夜の作戦で、とうとう漕ぎつけたのは良いが、暫くはお蔭で神経衰弱さ。しかし、思い出すなア、あの夜の苦労は。」
塩野の云うのを聞いているうち、矢代は千鶴子とチロルを早く切り上げてパリへ戻った原因の一つも、塩野からその夜会へ出席を急がれていた千鶴子の都合のためでもあったと思った。