Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんにおけるくりっぷんじけん
日本に於けるクリップン事件
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 日本に於けるクリップン事件 (にほんにおけるくりっぷんじけん) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.290 Zeichen · 21 Bildschirme
と思っただけで、すぐに寝入ってしまったのだが、それから三時間ばかり過ぎた明け方の五時近く、主人が再び眼を覚ますと、隣家の物音は微かながらもまだ続いていた。しかし今度は、犬の吼えるのは聞えないで、多分亭主が例のひいひい悲鳴を挙げているのであろう、「堪忍してくれエ!」とか、「御免よう!」とかいうらしい声が、途切れ途切れに、さも哀れッぽく、力なく響いた。主人はその時、今まで喧嘩が明け方までも続いたことは一度もないので、これは少し変だと思った。そうしてなおよく聞いてみると、どうもいつもの喧嘩ではないような気がした。喧嘩なら細君の罵る声や、ぴしゃりぴしゃりと亭主の横ッ面を張り倒すような音がするのに、それがちっとも聞えて来ない。ただしーんとした静かさの中に、亭主の悲鳴ばかりが聞える。その悲鳴がまた、じっと耳を澄ましていると、「堪忍してくれエ!」というのではなく、「助けてくれエ!」というようである。……
B家の主人が、後に証人として出廷した時に述べたところは右の如くで、彼はこれ以上この事件には関係がない。彼は第一に小栗由次郎の叫び声を聞いたが、それがハッキリしなかったので、現場へ駆けつけることを躊躇していた。