Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんにおけるくりっぷんじけん
日本に於けるクリップン事件
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 日本に於けるクリップン事件 (にほんにおけるくりっぷんじけん) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.290 Zeichen · 21 Bildschirme
するとたまたま、小栗の家の前を通りかかった第二の男が、これは明瞭に「助けてくれエ!」という声を聞いた。以下は主として第二の男の証言に基く事実である。――
その男は、小栗の家から更に五六丁東北の方の小山から切り出す石を、車に積んで魚崎の海岸へ運ぶ馬方であった。彼はその朝の五時少し過ぎに同家の前へさしかかった時、「助けてくれエ!」という声が二階の窓から聞えたので、思わず立ち止まってその方を見上げた。窓には何の異状もなく、更紗の窓かけが垂れ下っており、締まりのしてあるガラス障子には、朝日が赤くキラキラと反射していた。にもかかわらず、助けを呼ぶ声は頻りに繰り返されるので、彼は直ちに家の中へ踏み込もうとしたけれど、表口にも裏口にも厳重に鍵が懸っていた。よんどころなく、彼は台所のガラス障子を破ってはいり、階段を駈け上って、声のする部屋と思われる方へ走って行った。と、その部屋の襖が一枚外れて、三尺ばかり開いていたので、覗き込もうとすると、中からいきなり狼のような巨大な犬が「ウー」と呻って飛び着いて来たので、馬方は「あっ」といったまま、仰天して後ろへ退った。とたんに彼は、誰か室内に居る男が、「エス! エス! エス!」