Japanische Klassiker mit Furigana
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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談(二) (かにのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 80.664 Zeichen · 171 Bildschirme
と、甚九郎が聞くと、
「私は八王子在の者でございます、親も兄弟も無い、たった一人あった叔母にも、この比死なれましたから、下女奉公でもしていて、そのうちに私のような者でも妻室にしてくれる者があるなら、縁づきたいと思いまして、昨日江戸へ出て来ましたが、他に知人もないので、困っておりますうちに、持病の眩暈が起りまして、御厄介になりました」
女は気の毒な身の上であった。甚九郎は心をひかれた。
「それは気の毒だ、何人も力になる者がないのか」
「はい」
と、云って女は俯向いて考えていたが、やがて顔をあげて、
「……おねがいがございます」
女の顔は紅くなっていた。甚九郎は考えた。
「何だね」
「こんなことを申しましては、なんでございますが、お見受け申しますところ、お一人のようでございますから、婢なり何なりにして、私をお傍へ置いてくださいますまいか、そのかわり、私は親の残してくれた金三十両持っております、それを商の資本にお使いくださいまし」
懐へ手を入れて財布を出してその口を開けた。中には小判が光っていた。女はそれを甚九郎の前に置いた。三十両あれば商も大きくできて従って利益も大きい。