Japanische Klassiker mit Furigana
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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談(二) (かにのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 80.664 Zeichen · 171 Bildschirme
「どんな話」
「べつにどんな話でもない、こちへ来てみい」
「何処へ往く」
「此処でいい、もすこし中へはいり、人に見える」
「いやよ、そんな処へ往くは、用事があるなら翌日の午聞く」
お種は恐ろしくなったので走って逃げようとした。と、男の手が蛇のように体にまきついた。
「いや、なにをする」
「そんなに嫌うもんじゃないよ」
お種は体の自由を失ってしまった。男はそのままお種を抱きかかえて、果樹の茂みの中へ入って往こうとした。その男の眼の前に不意に閃いたものがあった。男はお種を突き放してその手で両眼を被いながら、
「あッ」
と、叫んで後へ飛びすさった。男の眼の前には大きな紫色をした鋏のような物が閃いたのであった。男は燕のように身を飜えして逃げて往った。
お種は抱きかかえられる間もなく突きはなされたので、よろよろとして倒れそうになったのをやっと踏みこたえた時に、門の前の霧の中へ逃げ込んで往く男の後姿を見た。お種はこれは何人か人が来たから逃げたものだろうと思って、安心して待っていたが何人も来なかった。
翌日からお種は仕事が手につかなくなった。彼女はしかけていた仕事の手を止めてぼんやりしたり、家の前に出て立ったりした。