Japanische Klassiker mit Furigana
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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
Lesen Sie 日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江 (うつりが) von 近松 秋江 (ちかまつしゅうこう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.306 Zeichen · 300 Bildschirme
それから中一日置いて、約束の明後日になって、今に来るかくるかと一日どこへも出ず晩まで待っていたけれど母親は訪ねて来ないので、とうとう待ちあぐねて、日暮れ方にまたこちらからそこまで出かけて往ってみた。と、一昨日見た飯田と誌した表札は取りはずしてしまって、相変らず潜戸は寂然と閉まっている。ややしばらくそのままそこに佇んで思案をしていると、すぐ左隣りの二十七、八のおかみさんが、入口から顔を出して、
「お隣りはもうお留守どっせ」という。
「ああそうですか。もうお留守て、誰もいないのですか」と重ねて訊くと、
「ええ、私、どやよう知りませんけど、何でも病人さんが、えらい悪うて入院してはりますとかいうて、お婆さんも昨日付いて行かはりまして、今どなたもいやはりゃしまへん。何や知らん、お婆さんこの二、三日えらい忙しそうにいうてはりました」という。
私は、何だか狐につままれたようで、茫然としていたが、そういえば、母親が一昨日話していた隠居のお婆さんが入院したというのかも知れぬと思いながら、なおそこを立ち去りかねて、一、二度表から潜り戸を引っ張ってみたり、子窓の磨り硝子の障子の隙から家の中を窺いてみようとしたけれど、隣家の女房が見ているので、押してそうすることもならず、そのまま引き返して路次を出て来た。